ひとと動物のかかわり研究会・お知らせ
 ひとと動物のかかわり研究会は、研究・人材育成・シンポジウム等、年間を通して様々な活動を行っています。



 

第4回学術大会 
ひとと動物のかかわりシンポジウム@

東日本大震災後に私たちが取り組んだこと
佐藤真美(動物看護護師:宮城県利府町オノデラ動物病院)

 本日は東日本大震災において、現地の動物と動物看護師が取り組んだことをお話しさせていただこうと思います。
まずこの場を借りて皆さまにお礼申し上げたいと思います。この度の大震災では、全国の皆様から、たくさんの支援と暖かい応援のメッセージをいただきました。本当にありがとうございました。

「全国の皆様たくさんのご支援ありがとうございます」

早くも大震災から7カ月がたちました。
これまでに私たちが行ってきた活動を大きく3つに分けて紹介したいと思います。

「活動内容
@ 避難所での動物支援活動
A 周辺地域への活動協力
B 宮城県被災動物保護センター」

まずは避難所で行ってきた支援活動についてお話しようと思います。

場所の説明

その前に場所の説明をしていこうと思います。
私たちの病院は宮城県の利府町にあります。
宮城県利府町は塩釜市、多賀城市、七ヶ浜と津波で多大な被害を受けた隣接する地域にあります。
私たちは利府町と多賀城市、塩釜市とそれぞれの動物病院と協力して地域の被災動物支援活動を行ってきました。中でも私たちは主に七ヶ浜町で活動しました。

病院の被害
3月11日、午後の診察の準備を行っていた時、震度6弱の地震の揺れが襲い、たくさんの薬やフードが飛び、扉はバタンバタンという大きく揺れました。
長い揺れが収まってから入院の動物たちが落ち着いていることを確かめ、割れたガラスや床に散らばったフードの片付けをしていましたが、信号が止まったり、電線が切れたりと
道路がかなり危険な状態にあったため、日が落ちる前に病院を早めに閉め、帰宅することにしました。

震災後の病院の様子
翌日から、病院に集まった私たちは、水や食糧、明りの確保のため、手分けして店頭販売に並びました。

七ヶ浜町のスタッフは津波で道路が寸断され出勤できす、連絡の取れない状況でした。
まずは病院の機能を復旧するために行動しました。スタッフの半数以上は一人暮らしのため、
みんなで持ち寄った食糧で炊き出しを行いました。停電のために懐中電灯を使い入院の子の診察を行ったりもしました。
3日目に病院の電気が復旧してから、近隣の動物病院や、多賀城市で津波の被害に遭った動物病院と連絡がとれ、避難所で薬やフードがなく、飼い主さんたちが困っていることを知りました。そこで病院ごとに地区を割り切り、協力して支援活動を行うことになりました。

七ヶ浜町の被害
私たちが担当になった七ヶ浜町は、低い土地にある住宅地のほとんど被害を受け、避難所は人であふれかえっていました。
こちらの写真は七ヶ浜町の海岸から1キロメートル以上離れた場所ですが、家や車などのがれきが押し寄せてきています。
さらに海岸に近い水産加工場では丈夫なガソリンスタンドの建物だけを残して全部流されてしまいました。

塩釜市・多賀城市の被害
七ヶ浜町に入るための塩釜や多賀城の主要な道路は全て冠水し、大きく迂回しなければいけませんでした。左上の写真は多賀城市内を走る、国道45号線です。こちらは震災2日目以降に撮影された写真ですが、未だに冠水しています。右下の写真は、塩釜市内の道路です。奥の方に見える煙は、石油コンビナートの火災です。

避難所の把握
まずはどこの避難所に何人の方が動物同伴で避難しているのか、車中で避難している人も含め、把握する必要がありました。ひとつひとつ避難所をまわり、動物を連れている方にお話を聞いて、情報を集めました。お話を聞いていると、中には、被災した自宅の跡地にに猫ちゃんやわんちゃんたちを係留し、ごはんだけを置いてきている方も少なくはありませんでした。
このような被害を受けた七ヶ浜で動物のために活動することはとても難しいことでした。獣医師だと名乗れば「人間の医者じゃないのかぁ」とがっかりされたり、「今は動物のことなんて考えてられない」と追い返されたりもしました。私たちは周囲に細心の注意を払って活動しました。避難所に何度か足を運んでいると、だんだんと私たちの活動に理解を示していただけるようになりました。避難所の責任者の方にも協力していただき一般の方とトラブルにならないようペット同伴の方を集めて、専用の別室を設けていただくこともできました

ペットフードの配布。
ペットフードを避難所の飼い主さんと、在宅避難の飼い主さんにも自由にとっていただけるように、このようなフード箱を作り、目立つところに設置しました。病院のフードの大きな袋も皆様に平等に行き渡るように小分けにし、避難所に持って行きました。
フード箱はいっぱいに入れても2〜3日でほとんど空になってしまうので、頻繁に補充しにいかなければいけませんでした。

動物たちの診察
フード箱の補充とともに同伴で避難している動物たちの診察も行いました。こちらの子犬たちは震災の日の夜に生まれた子犬たちです。避難所の子どもたちがいつも見にきていて、みんなの輪の中心にいました。日ごろの診察では震災前から罹っていた皮膚病やテンカンの子への処置を行いました。

(無料)健康相談会
さらに私たちが尋ねる時間に避難所を不在にしている方もいるとのことで、日程を前もってお知らせして健康相談会も実施しました。避難所の方だけでなく、在宅避難の方にも来ていただけました。
全体を通して爪切りや耳掃除、おしりしぼりなどの意外にも衛生面での日常ケアを頼まれることがとても多かったです。健康相談会を実施していると、飼い主さんたちから洗ってあげたいというお話を聞くようになりました。七ヶ浜町だけでなくお隣の多賀城市でも同じような要望が出ていたため、合同でシャンプー会を開くことになりました。
多賀城市、七ヶ浜町も断水していたため、お水はこちらから持っていきました。100リットルのタンクにお水を張り、湯沸かし太郎というものでお湯を沸かします。こちらに積んであるジョーロはシャワー代わりに使います。他にもタライやベビーバスも湯船代わりに持っていきました。こちらの自衛隊の方々は人の入浴支援のために来ていた方々でしたが、動物の入浴支援ということで興味津々という感じで見学されていかれました。

シャンプー会の実施
人もやっと入浴支援が始まったばっかりで、毎日お風呂に入れる状況になかったことを考え、会場は一般の方々があまり通らない、避難所の裏などを借りました。シャンプー会は2回ほど行いましたが、2回とも予定していたと頭数を超えての参加となり、とても好評でした。始まる前からこのように行列ができていました。飼い主さんにも手伝ってもらいながら、どんどんと洗っていきます。このように津波を被った子は泥水になるくらい汚れていました。ジョーロをシャワー代わりに、泡を流したらタオルで良く拭きながら、ジェットヒーターで乾かしていきます。ドライヤーでは使用ワット数が大きく電源が落ちてしまう可能性があり、灯油を使ったジェットヒーターにしたのですが、短時間で乾かせるのでとても便利でした。動物たちも飼い主さんたちもさっぱりできてとてもいい笑顔で向けてくれました。

震災から一カ月…ライフラインの復旧
<病院>
電気…3日目
水道…19日目
<七ヶ浜の高台>
電気…5日目
水道…25日目

震災から1カ月が過ぎ病院や七ヶ浜町のライフラインも次第に復旧してきました。それにともない病院にいらっしゃる患者さんの人数も、震災前にだんだんと戻りつつありました。

避難所の統合
・フード箱を大きくリニューアル
・仮設住宅についての相談

各地の避難所では、浸水した自宅の片付けが終わった方や、アパートが見つかった方などが次々と退去し。避難している方が減ってきていました。小さな避難所が大きな避難所に統合されるとのことで、こちらのようにフード箱を大きくリニューアルしました。それにともない、仮設住宅に動物と一緒に入居できるか等の相談も増えていました。

震災から1カ月…季節の変化と気温の上昇
・熱中症への注意呼びかけ
・フィラリア・ノミ・ダニ予防

また季節が変わり暖かい日が続くようになっていたので、フィラリアやノミ・ダニの予防のお薬を提供したりしました。それから車で避難している方も多かったので、このように熱中症についての危険性をよく知っていてもらえるようポスターを掲示し呼びかけを行いました。


全国からの支援物資
・ガソリンの流通
・運送機能の回復
避難所に運ぶ物資は初めは病院にあったフードの在庫、入院の子用にあったペットシーツや猫砂が中心でしたが、このころになるとガソリンも入れられるようになり、より様々な種類のフードや、衛生用品、リードや首輪などが運べるようになりました。こちらの写真は獣医師会に届いた荷物ですが、ガソリンがなくそれまで、獣医師会に取りに行くことができなかったので、こんなに全国からいろいろとモノが届いていることを知ったのもこのころでした。

病院に届いた支援物資
このころになると私たちの活動を知った患者さんが病院に直接支援物資を届けてくれるようになりました。写真の男の子も持っていますが、ペット用のウェットティッシュやドライシャンプーなど水を使わずに汚れが取れる衛生用品は避難所の飼い主さん方に特に喜ばれていました。

また全国の交流ある 動物病院からも本当にたくさんの支援をいただきました。愛知県の動物病院では、このように待合室に設置した募金箱で、患者さんにも募金を呼び掛けていだきました。また衛生用品が喜ばれていると知った関東の先生からは大量のドライシャンプーが届きました。

全国からの支援

全国からの支援は、義損金や物資だけではありません。新潟や東京からたくさんの方が私たちの活動に賛同し、お手伝いに来て下さりました。
特にこちらのお二方には熱い支援をしていただきました。
左側は板谷智子さん。動物行動学のカウンセラーをして、専門学校で講師をしていた経験をおもちです。右側は獣医歯科専門医として、全国で活躍されているトダアヤコ先生です。

仮設住宅で生活を始める前に
動物の目線になって考える、飼い主の為の「共同生活マナー講座」講師:板谷智子先生

避難所で動物に対するイメージのあまり良くない原因に、飼い主のマナーの悪さがあるということで、板谷智子さんから仮設住宅に入る動物さんと飼い主さんの為に、マナー講座を開きたいと、提案していただきました。会場を借り、動物の目線になって考える、飼い主の為の「共同生活マナー講座」を開催しました。たくさんの飼い主さんにお集まりいただき、講座中は動物を飼っていない一般の方も足を止めて聞いてくれたり、講座が終わった後も、みなさんそれぞれの相談をするため残って、板谷さんとお話ししていたりしました。

動物病院に行くのが大変な今
お家で出来る、動物の為の「健康、衛生ケア講座」講師:奥田綾子先生

奥田綾子先生がいらっしゃった際には、車が津波で流されてしまったり、収入がなくなってしまったりと動物病院に頻繁に通うことが難しくなってしまった飼い主さんのために、お家で出来る、動物の為の「健康、衛生ケア講座」を開催していただきました。この講座には近隣の獣医さんも集まりとてもわかりやすい勉強会になりました。二つ目の会場では急に停電してしまうトラブルに見舞われましたが、奥田先生の起点でなんとか乗り越えることができました。

3か月が過ぎるころには仮設住宅への入居が順調に進み、避難所のまだ残る方も若干いましたが、解散ということ形になりました。避難所の解散式ではいつも健康相談会に顔を出してくれていたミニチュアダックスのお父さんが、最後の炊出しをするということで、私たちも招待していただきました。

@ 避難所での支援活動
動物と飼い主が負担なく避難生活を送れるように
 避難所の責任者、自治体の関係者の方をはじめ、たくさんの方々に理解と協力をいただき、3カ月にわたって避難所での動物支援活動を行うことができました。

以上をまとめ、私たちは動物たちと飼い主たちが負担なく避難生活を送るために、避難所の責任者の方、自治体の関係者をはじめ、たくさんの方々に理解とご協力いただき、3カ月間にわたって、避難所での動物たちとその飼い主さんたちの支援活動を行うことができました

A 周辺地域への活動協力
避難所での支援の合間をぬって、私たちは周辺地域を訪ね、動物支援活動のお手伝いもしました。地域によって支援物資の需用や、保護活動に違いがあり、お互いに協力しあうことによって、私たちの活動を進めていく上での参考にもなりました。訪ねたのは気仙沼市、石巻市・東松島市、名取市・亘理町、福島県の南相馬市です。

気仙沼市
気仙沼市はフカヒレで有名な全国有数な漁港でした。津波と火災によって大きな被害を受けました。気仙沼市では、被災動物の預かりをしていた、パッド&テイルさんに物資を届け、さらに預かり中の子たちの間に感染症がないようにと、ワクチン接種もお手伝いしました。

石巻市、東松島市
石巻市、東松島市は、この震災でとても有名になりました。宮城県では仙台市に継いで人口が多く、広い範囲で甚大な被害を受けました。こちらは石巻動物救護センターの立ち上げ当初のもので、たくさんの方が集まり、これからの活動について意見を出し合っていました。しかし中心部でもかなりの頭数が被災したため、離れた半島などでは、なかなか支援の手が届きませんでした。私たちはそういった場所への物資の運搬を手伝わせていただきました。

名取市、亘理町
名取市、亘理町は、震災当日テレビ中継された、黒い津波に襲われた場所ですが、私たちが訪ねた時には、内陸側の先生方が沿岸部の先生たちを応援しにきていました。ある動物病院では、仮設住宅の20%を動物同伴可能にしていただけるよう署名活動を行っていました。さらに福島から避難してくる方がおり、そちらの救護活動も必要となってきていました。

福島県南相馬市
福島県南相馬市では、原発の事故の影響でつい最近まで緊急時避難準備区域とっていました。街の道路が至る所で閉鎖されています。人々が次々と県外へ避難する中、わずかに残った飼い主さんや動物たちのために診察を続ける獣医さんがいました。その獣医さん自身も家族のために宮城県に移り住みながら毎日1時間以上かけて、南相馬の病院に通っています。被災した獣医さんとスタッフのための支援も必要となっていました。

A 周辺地域への活動協力
周辺地域での活動を通して、被災の規模やそれぞれの状況によって、支援活動のニーズも大きく異なりました。さまざまな支援活動に協力することで、私たち自身の支援活動の参考になりました。

3・宮城県被災動物保護センター
宮城県被災動物保護センターでの活動についてお話ししたいと思います。
センターは宮城県本宮町にある宮城県動物愛護センター内に作られました。初めは県の職員さんたちが中心となって運営されていましたが、避難所での活動が落ち着いたため、獣医師会も協力することになりました。

宮城県被災動物保護センターとは
・飼い主が行方不明、死亡して身寄りのない子
・飼い主がまだ一緒に住める環境ではなく長期預かりが必要な子
                       を保護するための施設です。

センターでは飼い主さんか行方不明、または亡くなられてしまい身寄りのない子や、飼い主さんがまだ一緒に住める環境が整うまでの長期預かりが必要な子のために、近隣のボランティアさんたちと協力してお世話をしています。
左上の写真はセンターの事務所です。右上はわんちゃんが夜眠るためのクレートです。
朝にボランティアさんたちと協力して掃除します。わんちゃんたちを係留する場所には日差しや雨を避けるためのテントが張られ、わんちゃん同士の相性を考慮して接触しないように係留します。夏休みには親子ボランティアさんやたくさんの学生ボランティアさんにきていただきました。朝と夕方2回の散歩をし、一人一人に合わせた食事を用意します。体調の良くない子は獣医師と看護師で診察します。

譲渡会の開催
身寄りのない子たちの新しい家族を見つけるために譲渡会も開催しています。夏休みに毎日のようにボランティアに来てくれていた女の子がかわいいポスターを作ってくれました。

最近では元の飼い主さんのもとに帰れた子や、里親さんの元に引き取られた子から、たくさんのお手紙が届けられるようになりました。

今では保護している頭数が、一番多かった時の半分以下になりました。現在も活動は継続中ですが、全員が幸せな環境で過ごせるようになる日まで、今後も継続して活動していきたいと思います。

今回の発表のまとめです。
7カ月間の活動を通してのまとめ
動物とその飼い主さんの為の支援活動を行うためには、被災した地域の方、ボランティアの方、そして多くの支援を下さる全国の皆さんの「つながり」「絆」が重要だと感じました。
最後に私たちの活動を記録したブログがあります。今日紹介しきれなかった活動もたくさんが紹介されていますので、興味のある方は、もしよろしければご覧下さい。

(文章:事務局 池田仁美) 
「宮城県の獣医たち」〜震災で被害を受けた多くの動物たちと飼い主さまへ〜 
http://miyagi-vet.jugem.jp/
  
 
 
 
 
 
サイトマップ リンク

個人情報について

お問い合わせ top